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瞑想1:頑張る技術は学んできた。      でも、「休む技術」は誰も教えてくれなかった。

更新日:6月30日




― 忙しい人ほど、瞑想が必要だと気づいた話


私は看護師として夜勤をしながら、医療メンター協会の活動を行っています。

講座をつくり、学びを深め、現場で実践し、また検証する。

気が付けば、去年の2025年10月頃から今年の6月頃まで、ほとんど休みらしい休みを取らずに走り続けていました。


好きな仕事です。

やりたいことでもあります。

だから苦痛ではありませんでした。

しかし、ある日、少しだけ違和感を覚えました。


頭が働かない。

集中できない。

考えがまとまらない。

何となく不安定。

睡眠も浅い気がする。

身体よりも、脳の方が疲れ切っている。

そんな感覚でした。


一瞬、

「もしかすると、うつ状態なのだろうか。」

そんなことまで頭をよぎりました。

もちろん、自分だけの感覚で判断できるものではありません。

しかし、自分自身を客観的に眺めてみると、一つだけ確かなことがありました。

私は、何か月も脳を休ませていませんでした。



「休んでいるつもり」だった私


今振り返ると、不思議なことがあります。

私は休憩を取っていました。

仕事が終わればソファに座る。

スマートフォンを開く。

SNSを見る。

YouTubeを見る。


帰宅して家事をするときも、動画や音楽を流している。

布団へ入れば、

「明日は何をしよう。」

「講座はもっと良くできる。」

「現場では、あの関わり方もあったかもしれない。」

そんなことを考えながら眠りにつく。

身体は止まっています。

しかし、

脳は一日中働き続けていました。



現代は便利です。

暇になる瞬間がありません。

少しでも時間が空けば、スマートフォンが情報を届けてくれます。

通知が鳴る。

動画が流れる。

SNSを開く。

次から次へと新しい刺激がやってきます。

私たちは「休憩している」と思っています。


でも、本当にそうでしょうか。

脳は、

見て、

考え、

判断し、

感情を動かし、

情報を処理し続けています。

つまり、

身体は休んでいても、脳は働き続けている。

そんな生活を、私は何か月も続けていました。



心は、突然壊れるのではない


私は支援という仕事を通して、以前から一つ感じていることがあります。

心は、ある日突然壊れるのではありません。


コップに少しずつ水が溜まるように、

忙しさ。

責任。

睡眠不足。

緊張。

プレッシャー。

我慢。

それらが毎日少しずつ積み重なっていく。


そして最後の一滴が落ちた瞬間、人は突然壊れたように見えます。

けれど、本当は最後の一滴が原因ではありません。

それまで積み重なってきた何百滴もの疲労があったのです。


今回、私はそのことを、自分自身の身体で学びました。



頑張ることは得意だった


私たちは学校でも社会でも、

「頑張る方法」

はたくさん教わります。

努力。

根性。

忍耐。

継続。

時間管理。

目標設定。



一方で、

「休む技術」

を教わる機会は驚くほど少ないように思います。


私はこれまで、瞑想も続けていました。

一日5分ほど。

しかし、正直に言えば、どこかでこんな気持ちもありました。

「本当に意味があるのだろうか。」

「この時間があるなら仕事を進めた方がいいのではないか。」


瞑想を、どちらかと言えば「トレーニング」として捉えていたのです。


ところが今回、自分自身が限界に近い状態になって初めて、その考えが変わりました。

瞑想は、精神修養でも、特別な能力を身につけるものでもありませんでした。


疲れ切った脳を守るための技術だった。

そう実感したのです。



私が始めた、小さな実験


そこで私は、一日のどこかで15分だけ、自分のための時間を確保することにしました。


椅子にもたれます。


目を閉じます。


呼吸だけを感じます。


雑念は、もちろん浮かびます。

「メールを返さなきゃ。」

「資料を作らなきゃ。」

「明日の夜勤は……。」

そんな考えが次々と出てきます。


でも、そのたびに、

「ああ、また考えていたな。」

そう気づいて、静かに呼吸へ戻る。


ただ、それだけです。


驚いたのは、その15分を続けるうちに、少しずつ頭の重さが抜けていったことでした。

もちろん、これは私自身の体験です。

すべての人に同じ変化が起こるとは言えません。

しかし少なくとも私にとっては、

5分では切り替えられなかった脳が、15分という時間を与えることで、ようやく「休む」ことを思い出し始めた。


そんな感覚がありました。

そして私は、一つの考えにたどり着きます。

もしかすると私たちは、

頑張る技術ばかり磨いて、休む技術を忘れてしまっているのではないだろうか。



脳科学は、少しずつ「休むこと」の価値を明らかにし始めています。


今回、自分自身の体験をきっかけに、改めてマインドフルネス瞑想や脳疲労について多くの論文や研究を調べ直しました。

すると、以前よりも「休むこと」の価値が少しずつ科学的にも明らかになってきていることを知りました。


例えば、マインドフルネス瞑想には、

  • ストレスの軽減

  • 注意力・集中力の向上

  • 感情の調整

  • 不安や抑うつ症状の軽減

  • 睡眠の質の改善

などについて、一定の科学的根拠が積み重ねられています。


医療従事者や介護職など、ストレスの高い職種に対する研究でも、バーンアウト予防や心理的負担の軽減につながる可能性が報告されています。

もちろん、「瞑想をすれば全員が劇的に変わる」という話ではありません。

研究方法や個人差もあります。

それでも、「脳を休ませる時間」が心身へ良い影響を与える可能性は、以前よりずっと多くの研究で示されるようになってきました。



「脳は休んでいるようで休んでいない」


最近、私が特に興味を持っているのが、

DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)

という脳のネットワークです。

これは、ぼーっとしている時や、過去を思い返したり、未来を考えたり、自分について考え続けたりする時に活動しやすいネットワークです。


この働き自体は、人間にとって必要な機能です。

未来を計画する。

経験を振り返る。

自分を理解する。

どれも人生には欠かせません。


しかし、その働きが過剰になると、

頭の中で考え続ける。

不安が止まらない。

脳が休まらない。

そんな状態にもつながる可能性があると言われています。



マインドフルネス瞑想では、このDMNの活動パターンが変化することが報告されており、それが「頭が少し静かになった」と感じる体験につながっているのではないかと考えられています。


私自身が感じた「脳が休まる」という感覚も、こうした研究を知ることで、少し納得できるようになりました。



認知症との関係は、まだ研究が続いています。


もう一つ、私が興味を持っているのが認知症との関係です。

近年、アルツハイマー病では、アミロイドβというタンパク質が脳内に蓄積することが病態の一つとして知られています。


また、睡眠中には脳脊髄液の循環を介して老廃物を排出する仕組み(グリンパティックシステム)が働き、アミロイドβの排出にも関わっている可能性が示されています。


睡眠不足や睡眠の質の低下が、この排出機能に影響する可能性についても、多くの研究が行われています。


一方で、

「瞑想によってアミロイドβが減少する」

あるいは

「瞑想だけで認知症を予防できる」

ここまで言えるだけの科学的根拠は、現時点ではまだ十分ではありません。


呼吸法や脳波、認知機能との関係についても研究は進んでいますが、今後さらに検証が必要な分野です。

医療者としては、期待と事実を分けて理解する姿勢を大切にしたいと思っています。

だから私は、「瞑想は認知症予防になる」と断言することはできません。


しかし、

ストレスを減らし、

睡眠の質を整え、

心身を回復し、

結果として脳にとって望ましい生活習慣を支える。

その一つの方法として、瞑想には十分な価値があるのではないか、と考えています。



私が一番伝えたいこと


今回、一番大きな学びは、


頑張ることにも限界がある。


ということでした。


私は「もっと頑張れば何とかなる」と思っていました。


しかし実際には、

脳が疲弊すると、

感情もうまくコントロールできなくなる。

睡眠も乱れる。

集中力も落ちる。

身体も重く感じる。


つまり、

心と身体をコントロールしている脳そのものが疲れていたのです。

その時に初めて、

「頑張る」ことより先に、

「脳を休ませる」ことの重要性を実感しました。



休むことは、怠けることではありません。


医療の現場では、

患者さんに対して、

「無理をしないでくださいね。」

「しっかり休んでくださいね。」

そう自然に声をかけています。



けれど、自分自身にはどうでしょう。

支援する人ほど、

責任感が強い人ほど、

真面目な人ほど、

休むことに罪悪感を持ちやすいように思います。


だから私は、これから少し考え方を変えていこうと思っています。

15分の瞑想は、

仕事を止める時間ではありません。

サボる時間でもありません。

未来も支援を続けていくために、自分自身を整える時間。

そう考えるようになりました。



医療メンター協会が大切にしたいこと


医療メンター協会では、

コミュニケーション技術だけではなく、

支援者自身が健康であり続けることも、とても大切だと考えています。



良い支援は、

良い状態の支援者から生まれます。

だからこそ、

「頑張る技術」だけではなく、

「休む技術」

も、これからの医療・介護・福祉の現場には必要なのではないでしょうか。


私自身、今回の経験があったからこそ、このことを深く実感することができました。

忙しい毎日の中で、15分という時間は決して短くありません。

それでも、その15分が、その後の数時間、あるいは数年先の自分を支えてくれる時間になるかもしれません。


これからも私は、現場で学び、検証しながら、「支援者が長く支援を続けるための技術」を、一つずつ形にしていきたいと思います。


それが、医療メンター協会の目指す支援の在り方の一つです。




医療メンター協会 メンターコーチ 早崎達也 2026年6月

 
 
 

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