「メンターとは、理想を教える人ではない。理想を生きる人である。」
- 達也 早崎
- 7月13日
- 読了時間: 5分

私はこれまで、
「メンターコーチとは、人にコミュニケーションを教える人ではない。」
「現場で共に苦しみ、共に考え、共に成長する存在である。」
そう伝えてきました。
そして、その考えは今でも変わりません。
しかし最近、私は、その言葉の中に一つ、大きな穴があったことに気づきました。
私はいつしか、「現場でコミュニケーション理論を育てること」に大きな価値を感じるようになっていました。
だからこそ、現場に出ることなくコミュニケーションを教えている人に対して、どこか不信感を抱いていました。
「現場を知らない人に、現場で本当に使えるコミュニケーションなんて作れるはずがない。」
「机上の空論では、人は救えない。」
そんな思いが、私の中には確かにありました。
もちろん、それは間違いではないと思います。
実際、医療現場には現場でしか分からない現実があります。
だからこそ、医療メンター協会では、メンター自身が現場で働き続けることを大切にしています。
しかし、私は気づいてしまったのです。
現場にいることだけでは、足りなかったのだと。
その頃の私は、現場で使えるコミュニケーション技法を作ることに夢中になっていました。
夜勤で試し、失敗し、修正し、また試す。
それが私の使命だと信じていました。
でも、なかなか納得できるものは生まれませんでした。
そんなある日、親しいコーチとの対話の中で、一つの問いを投げかけられました。
「それって、本当にたっちゃんがやりたいことなの?」
私は迷わず答えました。
「もちろんです。これは患者さんとのコミュニケーションにもつながる、大切なことなんです。」
すると、コーチはもう一度、静かに問いかけました。
「それ、本当に?」
その問いは、技法ではなく、私自身に向けられていました。
私は、考え込みました
答えはすぐには出ませんでした
それも本当に大切にしたいことだったからです。
でもコーチは、真剣に、信じて待ってくれています。
そして、気づいたのです。
私が本当にやりたかったことは、技法を作ることではありませんでした。
人と、人として向き合うこと。
患者さんでも、スタッフでも、一人の人間として、その人の人生に誠実に関わること。
「あなたは、本当はどう生きたいのですか?」
そう問い続けること。
その人自身が望む人生を歩めるよう、真剣に伴走すること。
それこそが、私がコーチングを学び始めた原点でした。
でも、その原点には、怖さもありました。
本気で人と向き合えば、拒絶されるかもしれない。
「コーチングなんて怪しい。」
「余計なことをするな。」
「パワハラだ。」
そんな言葉を向けられた経験もあります。
だから私は、知らないうちに少しずつ、その怖さから距離を取るようになっていました。
人と本気で向き合う代わりに、技法を磨くことへ。
もちろん、それも必要なことです。
でも今振り返れば、それは私にとって、安全な場所でもありました。
そして、もう一つのことにも気づきました。
私は、本当に理想の医療を生きていただろうか。
夜勤の前にも講座を作り、休日にはコンテンツを作り、医療メンター協会を育てることに全力を注いできました。
それ自体に後悔はありません。
でも、その一方で、現場に立つ私自身はどうだっただろう?
理想の医療を、本気で実践していただろうか?
忙しさを理由にしていなかっただろうか?
効率やテクニックで乗り切る仕事になっていなかっただろうか?
気づけば、現場で働いてはいるけれど、理想を生きることから少しずつ離れていました。
そして、不思議なことに、それと同時に私の言葉の温度も下がっていったのです。
言葉の重みは、知識から生まれるのではない。
生き方から生まれる。
私は、その当たり前のことを忘れていました。
「現場に出ていない人が、現場を語ることはできない。」
そう思っていた私に返ってきたのは、もっと厳しい現実でした。
本気で生きていない人は、本気で人と向き合う人を育てることはできない。
この言葉は、誰かに向けられたものではありません。
私自身への言葉でした。
メンターとは、共に育つ存在です。
だから、現場で働いているだけでは足りません。
現場で、自分自身が理想の医療を本気で追い続けていること。
患者さんとの関わりも、スタッフとの関わりも、自分自身の在り方も。
すべてにおいて、「もっと良くできるはずだ」と挑戦し続けること。
その姿勢こそが、メンターの人格を育てるのだと思います。
そして、その後ろ姿があるからこそ、講座に説得力が生まれます。
言葉に厚みが生まれます。
人の心を動かす力が宿ります。
今回、コーチは、たった一つの問いを、何度も何度も私に投げかけてくれました。
「本当に、それがやりたいことなの?」
その問いがあったからこそ、私は医療メンター協会を立ち上げた原点へ戻ることができました。
コーチングとは、質問の技法ではありません。
相手の心の奥にある、本当の願いから目をそらさない覚悟です。
そして、メンターとは、理想を語る人ではありません。
誰よりも先に、その理想を生きようとする人です。
私はこれからも現場に立ち続けます。
技法を磨き続けます。
理論も育て続けます。
でも、それ以上に大切にしたいことがあります。
それは、自分自身が理想の医療を生きることです。
理論は、現場から生まれる。
人格は、理想を生きる姿勢から育つ。
そして医療メンターとは、その両方を、生涯かけて歩み続ける人でありたい。
私は、そうありたいと思います。



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