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「メンターとは、理想を教える人ではない。理想を生きる人である。」



私はこれまで、

「メンターコーチとは、人にコミュニケーションを教える人ではない。」

「現場で共に苦しみ、共に考え、共に成長する存在である。」

そう伝えてきました。



そして、その考えは今でも変わりません。

しかし最近、私は、その言葉の中に一つ、大きな穴があったことに気づきました。


私はいつしか、「現場でコミュニケーション理論を育てること」に大きな価値を感じるようになっていました。

だからこそ、現場に出ることなくコミュニケーションを教えている人に対して、どこか不信感を抱いていました。


「現場を知らない人に、現場で本当に使えるコミュニケーションなんて作れるはずがない。」

「机上の空論では、人は救えない。」


そんな思いが、私の中には確かにありました。


もちろん、それは間違いではないと思います。


実際、医療現場には現場でしか分からない現実があります。

だからこそ、医療メンター協会では、メンター自身が現場で働き続けることを大切にしています。


しかし、私は気づいてしまったのです。

現場にいることだけでは、足りなかったのだと。



その頃の私は、現場で使えるコミュニケーション技法を作ることに夢中になっていました。

夜勤で試し、失敗し、修正し、また試す。


それが私の使命だと信じていました。


でも、なかなか納得できるものは生まれませんでした。


そんなある日、親しいコーチとの対話の中で、一つの問いを投げかけられました。


「それって、本当にたっちゃんがやりたいことなの?」


私は迷わず答えました。

「もちろんです。これは患者さんとのコミュニケーションにもつながる、大切なことなんです。」



すると、コーチはもう一度、静かに問いかけました。

「それ、本当に?」



その問いは、技法ではなく、私自身に向けられていました。

私は、考え込みました


答えはすぐには出ませんでした


それも本当に大切にしたいことだったからです。


でもコーチは、真剣に、信じて待ってくれています。


そして、気づいたのです。

私が本当にやりたかったことは、技法を作ることではありませんでした。


人と、人として向き合うこと。

患者さんでも、スタッフでも、一人の人間として、その人の人生に誠実に関わること。



「あなたは、本当はどう生きたいのですか?」



そう問い続けること。

その人自身が望む人生を歩めるよう、真剣に伴走すること。


それこそが、私がコーチングを学び始めた原点でした。


でも、その原点には、怖さもありました。



本気で人と向き合えば、拒絶されるかもしれない。

「コーチングなんて怪しい。」

「余計なことをするな。」

「パワハラだ。」

そんな言葉を向けられた経験もあります。



だから私は、知らないうちに少しずつ、その怖さから距離を取るようになっていました。


人と本気で向き合う代わりに、技法を磨くことへ。


もちろん、それも必要なことです。

でも今振り返れば、それは私にとって、安全な場所でもありました。



そして、もう一つのことにも気づきました。

私は、本当に理想の医療を生きていただろうか。


夜勤の前にも講座を作り、休日にはコンテンツを作り、医療メンター協会を育てることに全力を注いできました。


それ自体に後悔はありません。


でも、その一方で、現場に立つ私自身はどうだっただろう?

理想の医療を、本気で実践していただろうか?

忙しさを理由にしていなかっただろうか?

効率やテクニックで乗り切る仕事になっていなかっただろうか?

気づけば、現場で働いてはいるけれど、理想を生きることから少しずつ離れていました。

そして、不思議なことに、それと同時に私の言葉の温度も下がっていったのです。



言葉の重みは、知識から生まれるのではない。

生き方から生まれる。


私は、その当たり前のことを忘れていました。


「現場に出ていない人が、現場を語ることはできない。」

そう思っていた私に返ってきたのは、もっと厳しい現実でした。

本気で生きていない人は、本気で人と向き合う人を育てることはできない。

この言葉は、誰かに向けられたものではありません。

私自身への言葉でした。



メンターとは、共に育つ存在です。

だから、現場で働いているだけでは足りません。

現場で、自分自身が理想の医療を本気で追い続けていること。


患者さんとの関わりも、スタッフとの関わりも、自分自身の在り方も。

すべてにおいて、「もっと良くできるはずだ」と挑戦し続けること。

その姿勢こそが、メンターの人格を育てるのだと思います。


そして、その後ろ姿があるからこそ、講座に説得力が生まれます。

言葉に厚みが生まれます。

人の心を動かす力が宿ります。



今回、コーチは、たった一つの問いを、何度も何度も私に投げかけてくれました。

「本当に、それがやりたいことなの?」


その問いがあったからこそ、私は医療メンター協会を立ち上げた原点へ戻ることができました。


コーチングとは、質問の技法ではありません。

相手の心の奥にある、本当の願いから目をそらさない覚悟です。



そして、メンターとは、理想を語る人ではありません。

誰よりも先に、その理想を生きようとする人です。



私はこれからも現場に立ち続けます。


技法を磨き続けます。


理論も育て続けます。


でも、それ以上に大切にしたいことがあります。

それは、自分自身が理想の医療を生きることです。


理論は、現場から生まれる。

人格は、理想を生きる姿勢から育つ。


そして医療メンターとは、その両方を、生涯かけて歩み続ける人でありたい。


私は、そうありたいと思います。

 
 
 

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